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医学ひとくち講座
肺がん〜肺がんの性質と治療法〜

 がんの研究が成果を上げるなか、がんの種別死亡率で肺がんは男性で第1位、女性で第2位であり、合わせて6万3千人以上が亡くなっています(平成18年)。肺がんが治りにくい理由、その治療法などについて、手稲渓仁会病院の成田吉明先生に話を聞きました。

Q1
肺がんの種類と症状にはどんなものがありますか

  肺は左右に片方ずつあり、右肺が上中下の3つ、左肺が上下の2つの『肺葉』という大きなまとまりに分かれます。肺葉を小さく区切ったまとまりを『区域』、さらに小さな区切りを『部分』といったりもします。

 肺がんは、罹患数と死亡数の差が小さく、生存率の低い難治がんの一つで、40代後半より増加しはじめ、高齢になるほど発生率が高くなります。肺がんは、自覚症状が現れにくいため発見が遅くなることが多く、発見時、既に7割が進行がんで見つかります。発生箇所によって2種類に分類され、1つは肺の奥にできる抹消型肺がんで、症状が出にくいため発見しにくく、全体の80〜90%を占めます。残りの10〜20%は、気管支の比較的太い部分にできる中枢型肺がんで、血痰、せき、胸部写真でが肺炎に似た影があらわれるなど、抹消型肺がんに比べ症状が現れやすくなっています。また、腫瘍が気管支をふさぎ、肺に空気が入って行かなくなる無気肺を起こすこともあります。

 その他、がんの性質によって非小細胞がんと小細胞がんの2種類に分類することができます。

Q2
予防と検査について教えてください
  肺がんの最大要因はたばこで、禁煙することが有効な予防法です。たばこがなくなれば、肺がんを含む全てのがんが3割減るとも考えられています。喫煙量が多く、喫煙をはじめてから年数を経ている方は気をつけてください。ただし、末梢型肺がんのなかでも女性に多いタイプの腺がんは、喫煙との関連性が比較的少ないとされています。また、肺線維症を患った患者さまの3割が肺がんを引き起こしていますので、定期的な画像検査が必要です。

 肺がんの検診では、胸部レントゲン写真による検査が一般的で、喫煙者の場合は痰を調べる喀痰検査も行われます。写真による検査では、レントゲン写真だと末梢型は発見することができても、心臓などの影に発生するものや、中枢型肺がんは発見しにくいため、CT写真の撮影をお奨めします。

Q3
見つかりにくい肺がん、転移の心配は
  肺は毛細血管のかたまりで、空気と血液が効率よく接して酸素と二酸化炭素を交換する役割をもっています。血のめぐりが良いだけに肺がんにかかった場合はがん細胞が他の臓器に転移しやすいのです。逆に、体のほかの部位からの転移先で最も多いのも肺です。このように肺がんは転移しやすいので、発見時には70%近い方が既に遠隔転移をきたしています。したがって肺がん治療は、肺自体、脳、骨、肝、副腎など転移しやすい部位への転移の有無を、内科医が検査して、進行度を判定することから始まります。

Q4
どのような治療が行われますか
  肺がんを根治するためには手術が必要で、一般的に肺葉単位の切除、さらに広がっていれば、最大で片肺の全摘出となります。しかし、切除や全摘出を行うことで、息切れが起こりやすくなるなど、日常生活における心臓への負担や、肺炎などにかかった場合の危険性が高まるため、切除範囲の決定には慎重な判断が必要です。病状が進んでから発見されることが多い、肺などに、他の疾患がある、高齢であるなどの理由で、手術できる症例は全体の30〜40%ほど。手術を行ったとしても、全体の5年生存率はその40〜50%です。つまり、全体の5年生存率は15%ほどで、難治性のがんと言えます。

 代表的な手術は、横向きに寝た状態から胸の横側を切開し、肋骨を押し広げるほか、1〜2本を切断して手の入る幅を確保して行います。10数年前から胸腔鏡という内視鏡を使用した手術が広がり、早期の肺がんを中心に適用されています。小さな傷ですむので、体への負担が少なく、早い社会復帰が可能です。当病院でも積極的に取り入れており、今では8割以上の方に適用しています。

 手術が行えないと判断された患者さまに対しては、症状をやわらげたり延命を図る治療法として、抗がん剤による治療や放射線治療などを行います。小細胞がんは予後が悪いがんですが、その2つの治療法がききやすいがんです。

Q5
注目されている治療法はあるでしょうか
  特殊な放射線である重粒子線による治療や、針を刺して腫瘍だけを焼くラジオ波焼灼治療など、今までの放射線治療よりも体への負担が少ない治療法が開発されています。

 また手術では、様々な理由で肺葉切除が行えない患者様に対して、姑息的に区域や部分を切除する縮小手術を行ってきましたが、近年では積極的縮小手術が取り入れられています。これは、根治性を損なわない範囲でできるだけ肺を温存するという方針に基づくもので、手術中に迅速な病理検査を行うことで実現することができました。これからのがん医療は、病理医との緊密な連携が必須といえるでしょう。

成田 吉明(なりた よしあき)先生

1985年 北海道大学卒業
1989年 北海道大学 大学院修了、帯広厚生病院、伊達赤十字病院、北海道大学病院第二外科助手を経て、
1997年 手稲渓仁会病院外科

日本外科学会指導医・専門医、日本呼吸器外科学会指導医・評議員、日本乳癌学会認定医、呼吸器外科専門医
所属:医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院 外科部長、胸部一般外科部長
成田 吉明(なりた よしあき)先生

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