胃瘻(いろう)について
Q1
胃瘻(いろう)とは?
胃瘻(胃瘻カテーテルが入っています。)
胃瘻とは胃と体表が瘻孔(穴)によってつながっている状態のことです(図1)。開腹して行う外科的胃瘻造設術は1850年頃から行われていますが、1970年代後半に小児外科医のGaudererは内視鏡手術の経験が豊富なPonskyと協力して、神経障害のために嚥下(※1)不可能な生後6ヶ月の小児に初めて経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)を成功させました。
PEGは手技が簡単で、患者さんへの肉体的、経済的負担が軽いことから現在では経管栄養を要する多くの方にPEGが行われています。
(※1)嚥下(えんげ)…飲食物などを飲み込む行為
Q2
胃瘻はどんな場合に造設されるのですか?
口から食事のとれない方や、食べてもむせ込んで肺炎などを起こしやすい方に行われますが、消化管機能が正常であることと4週間以上の生命予後が見込まれることが必要条件です。
内視鏡的に造設が不可能な場合は、大量の腹水があるとき、胃カメラの通過が困難な病変があるとき、極度の肥満など技術的困難や危険が予測されるときです。
Q3
鼻の管から栄養を入れる経鼻栄養と比べて、胃瘻栄養のメリットは何ですか?
第一に不快感が少ないということがあげられます。第二に一般的な経鼻栄養ではチューブが鼻・のど・食道にいつも入っているため、のどの辺りが不潔になりやすく、また気管への逆流も起こりやすくなります。そのため誤嚥(※2)性の肺炎がおこりやすく、嚥下訓練などのリハビリも行いにくいという欠点があります。
胃瘻栄養の場合にも誤嚥性肺炎は起こりますが、経鼻栄養に比べて起こりにくく、起こっても軽症ですむという傾向があります。リハビリ訓練も行いやすく、介護者の負担も軽くなるなどといったメリットもあります。
(※2)誤嚥(ごえん)…飲食物などを飲み込むときに、食道へ入るべき物が誤って気管へ入ってしまう事
Q4
実際にどのようにして胃瘻を作るのですか?
胃カメラと造設キットを用いて15分間程で作ることができます。患者さんの負担は、胃カメラをのむことと、上腹部の皮膚を0.5〜1cm切開され、そこへ直径1mmほどの太さの針を刺されることです。麻酔は皮下までの局所麻酔ですが、鎮静のために抗不安薬を静脈注射することがあります。
手術後は1〜3日間多少痛むことがありますが、軽い痛み止めで取り除くことができます。手術後1〜2日に糖を含んだ水分を数100cc注入し、3日目から経腸栄養剤を開始します。日毎に栄養剤の量を増やしていき、手術の約1週間後には必要栄養量のすべてが与えられます。シャワーは手術の1週間後、入浴は2週間後から可能です。
Q5
胃瘻カテーテルにはボタン型のものもあるのですか?
胃ろうカテーテルの4タイプ
胃瘻カテーテルは抜けないように、胃内固定板で止めています。胃内固定板は「バルーン(風船)型」と「バンパー型」の2タイプがあります。
体外部分は長いのがチューブ型で、ボタンのように短いのがボタン型です。胃内固定板と体外部分の形状によって、胃瘻カテーテルは図2のように4種のものに分けられます。
Q6
4種のカテーテルの長所と短所は?
バルーン型の長所は交換が容易であることです。短所はバルーンが破裂することがあり、短期間で交換になることがあることです。
バンパー型の長所はカテーテルが抜けにくく、交換までの期間が長いことです。短所は交換時に痛みを伴うことです。
ボタン型の長所は邪魔にならず、自己抜去(引っぱって抜いてしまうこと)がほとんどない、カテーテルの汚染が少ない、逆流防止弁がついていることなどです。短所は指先でボタンを開閉しづらいことがあることです。
チューブ型の長所は栄養チューブとの接続が容易であることです。短所はチューブが邪魔になり自己抜去しやすいことと、チューブ内側の汚染が起きやすいことです。
Q7
胃瘻が必要なくなったら、元に戻せますか?
口から十分に栄養が取れ、胃瘻が不要になったら胃瘻カテーテルを取り除くことができます。瘻孔は3時間ほどでふさがり、食事もその日のうちにできます。
Q8
胃瘻があっても、ごはんは食べられますか?
胃瘻が作られていても、口から食べることに何の支障もありません。むしろ食べるリハビリに適しています。食べた物がおなかから出てくることもありません。
Q9
お風呂に入れますか?
シャワーはもちろん全身湯船につかっても、まったく支障ありません。絆創膏を貼る必要もありません。
Q10
消毒が必要ですか?
手術後1〜2週間で消毒は必要なくなり、瘻孔を清潔にして、圧迫がかからないようにしておけば化膿することはありません。
Q11
栄養にどれくらい時間がかかりますか?
栄養摂取のスピードは患者さんの消化能力に応じて自由に調節できます。通常は1時間あたり200cc程度を点滴のように滴下します。消化管能力が落ちている患者さんでは、摂取スピードが速いと食道に逆流したり、下痢をすることがあります。
Q12
床ずれが改善するといわれますが?
胃瘻栄養によって患者さんの栄養状態が良くなり、床ずれが改善することがあります。床ずれだけでなく、リハビリの効果が上がって病状も改善することがあります。
松尾 繁信 (まつお しげのぶ)先生
1977年 札幌医大卒業
第一外科で消化器、乳腺、甲状腺外科の臨床研修
第一病理学でエンドトキシンショックと補体の関連について研究、医学博士号取得
1983年 遠別町立病院
1992年 遠別町立病院院長
2003年5月より、定山渓病院に勤務しております。
所属:
医療法人渓仁会 定山渓病院 医療技術部長
渓仁会グループ
定山渓病院
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