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医学ひとくち講座
神経難病について(深澤俊行先生)


Q1
難病とはどのような病気を指しますか?
 厚生労働省の規定によりますと、原因不明で治療方法も未確立、また後遺症を残す恐れが少なくないこと。
さらに慢性化し、経済的にも介護の面から家族に重い負担がのしかかるといった病気とされています。ですが、実際にはかなり治療法が確立されてきた難病も多くなっています。

Q2
神経内科での難病にはどのようなものがありますか?
 最も有名なパーキンソン病を始め、脊髄小脳変性症や重症筋無力症、多発性硬化症、多系統萎縮症、筋萎縮性側索硬化症など12疾患があります。これらを総称して「神経難病」と呼びます。この他にも、神経内科医が関わることの多い疾患は少なくとも18種あり、牛海綿状脳症(BSE)と関連したプリオン病もそのうちのひとつです。

Q3
神経難病の特徴は?
 神経疾患を診療する場合には、病変の発生場所と症状の経過をきちんと把握することが重要です。神経には大脳、小脳、脊髄などの中枢神経と末梢神経がありますが、どこに病気があるのかによって症状も対処法も違います。また、筋肉の病気も神経内科が扱う病気です。これらの場所は脳梗塞や感染症などのような急性疾患でも侵されますが、神経難病の特徴はその経過です。病気の種類や個人差によって経過は大きく異なりますが、症状・障がいが徐々に進行悪化してしまうことが基本的な特徴といえます。

Q4
治療法がなく悪化するということですか?
 必ずしもそうではありません。パーキンソン病のように、かなり有効な治療法が普及している例もあります。根治とはいかないまでも、病気の経過を改善させる治療法は、多くの神経難病で開発されています。また、これからもどんどんと開発されていく見込みです。

Q5
他の多くの病気と神経難病との違いは?
 私は「足し算」と「引き算」の違いと認識しています。多くの病気はがん細胞ができた=A炎症が発生し痛みがでた≠ネど、「何か余計なことが加わった」というイメージです。
一方、神経難病は、私達が普段全く意識することなく行っていること、例えば食べる、飲む、歩く、排泄するといった当たり前のことが、徐々に「奪われていく」というイメージです。もちろん個人差、病気の差はありますが、基本的にはこれが共通した特徴です。しかも、本人の努力や節制では予防できません。また、常に医学的な関わりを必要とする点では、障がいや加齢とも異なります。

Q6
代表的な神経難病の症状にはどのようなものがありますか?
表1
表1
 最も頻度が高く、有名なのはパーキンソン病でしょう。50〜60歳代に発症することが多いので、これからの高齢化社会では特に注視される病気といえます。症状を改善する薬も多数開発されていますが、使い方を誤ると取り返しのつかない副作用が発生することもあり、初期から神経内科専門医の診療を受けるべきです。また、有名な病気だけに、不適切な治療が安易に行われるケースもあります。

 脊髄小脳変性症は、お酒に酔った時と同様の症状が出ます。遺伝するタイプとそうでないタイプがあり、発症年齢も経過も実に多様です。治療は難しいですが、症状を軽くする方法がいくつか紹介されています。

 多系統萎縮症は、立ちくらみや排尿障がいなど自律神経の障がいが目立ちます。また、筋萎縮性側索硬化症は、全身の筋肉が徐々に弱り、痩せていく病気です。寝たきりになるケースも少なくありません。元ニューヨークヤンキースのルー・ゲーリック選手が患ったことから、ルー・ゲーリック病と呼ばれることもあります。

 多発性硬化症は、20〜30歳代でも頻繁に発症します。脳や脊髄、視神経などの中枢神経のあちこちに病巣ができ、さまざまな症状が出ます。例えば視力や感覚、排尿の障がいや四肢の脱力などが繰り返し出現し、障がいが徐々に進行するケースもあります。

 重症筋無力症は、時代劇役者の萬屋錦之助さんが患って有名になった病気です。末梢神経から筋肉への命令がうまく伝わらないことが原因です。

Q7
神経難病の原因とは?
北海道内の神経難病患者(人)
北海道内の神経難病患者(人)
 様々な説や事実があって、簡単には説明できないのが現実です。
ただ、多発性硬化症や重症筋無力症は精力的な研究の結果、かなり解明が進んでいます。
また、神経変性疾患も、最近ではかなりメカニズムの解明が進みました。私たちの体を形作っているたんぱく質を作る際、どうしても「でき損ない」のたんぱく質もできてしまいます。通常であれば、これらは処理されてしまうのですが、神経変性疾患では何らかの理由でうまく処理できなくなる。そのため、不要な「でき損ない」のたんぱく質が不必要に蓄積され、神経細胞を死に至らしめるというのです。
はっきりとした結論はまだ出ていませんが、このように研究は確実に成果を上げています。神経難病の原因が解明され、有効な治療法が確立されるまで、そう時間はかからないと信じています。

深澤 俊行 (ふかざわ としゆき)先生

医学博士  昭和30年1月29日生

1981年 3月 北海道大学医学部 卒業
1982年 4月 勤医協中央病院 勤務
1985年 4月 北海道大学医学部付属病院 勤務
1986年 6月 北祐会神経内科病院 勤務
2005年 4月より現職

北海道大学非常勤講師、日本神経学会評議員、日本神経免疫学会評議委員
日本神経治療学会評議委員、日本多発性硬化症協会医療顧問
所属:医療法人渓仁会 西円山病院 神経内科主任診療部長

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