大腸癌の手術と術後経過について(中村文隆先生)
Q1
大腸癌の外科手術による治療とはどのようなことですか?
切除した大腸癌(中心部の盛り上がっているところが癌で、そこを中心に約20cmの大腸が切除されています。)
大腸にできた癌を手術によって切除する治療方法で、大腸の一部を切除することになります(写真1)。
大腸癌を切除する方法には、
@ 開腹手術で大腸癌を切除する
A 腹腔鏡手術で大腸癌を切除する
という2つの方法があります。どちらの切除方法になるかは癌の大きさや位置、進行度などから総合的に判断されます。
Q2
大腸癌の開腹手術とは、具体的にどのようなことをする手術ですか?
おへそを避け、縦に20cmくらいの切開創になります。
全身麻酔をしたうえで、下腹部を縦に20cmほど切開します(図1)。
Q3
大腸癌の開腹手術とは、具体的にどのようなことをする手術ですか?
図2標準的な大腸手術
お腹の中を調べて癌を含む大腸を切除し、さらにその大腸の周囲のリンパ節も一緒に切除します。それから残った腸の端と端を縫い合わせます。
標準的な手術では、大腸は20〜30cmほど切除されます(図2)。
癌の部分を中心に前後10cmずつ、合わせて20cm程度の大腸を切除し、残った腸の端どうしをつなぎ合わせます。
@:右半結腸切除術 A:横行結腸切除術
B:左半結腸切除術 C:S状結腸切除術
肛門から少し離れていれば、Dのように腸どうしをつなぐことができます。しかしEのように肛門のすぐ近くにできた大腸癌では、肛門を含めた大腸を切除しなければなりませんので、人工肛門となります。
D:低位前方切除術 E:直腸切断術
Q4
大腸癌の腹腔鏡手術とは、どのようなことをする手術ですか?
図3:腹腔鏡下手術の手術創の一例(腹部の3〜4か所に1〜2cmほど切開創と大腸を取り出し、つなぎ合わせるための4〜7cm程度の切開創も必要です。※創の場所は、個々で異なります)
全身麻酔をしたうえで、腹部の3〜4か所を1〜2cmほど切開し、そこから直径1cmほどの筒をお腹の中に入れ、その筒を利用し腹腔鏡(カメラ)や手術器具を入れてお腹の中を調べ、癌を含む大腸と周囲のリンパ節を切除する手術です。
切除した大腸を取り出し、残った腸の端と端をつなぎ合わせるために4〜7cmほどの切開創も必要です(図3)。
腹腔鏡手術の最大の長所は、開腹手術に比べ傷口が小さく済むことです。そのため手術後の傷の痛みが少ないなど体の負担が軽く、開腹手術より早期の回復が可能となり得ます。
Q5
人工肛門とはどのようなものですか?
肛門のすぐ近くにできた大腸癌では、癌を十分切除するために肛門を含めた大腸を切除しなければなりません。肛門がなくなるので、便の出口を新たに設ける必要があります。この新しい便の出口のことを人工肛門と呼び、通常下腹部の左側につくられます(図2-E)。
最近は医療技術の進歩により、肛門の近くにできた大腸癌でもできるかぎり人工肛門にならないような手術方法も行われています。
Q6
手術したあと、いつから水分や食事をとることができますか?
手術後の回復の程度により異なることもありますが、当院では手術後2日目から水分摂取を開始しています。食事は手術後4日目頃に3分粥から開始しており、1日ごとに5分粥→7分粥→全粥となります。
Q7
手術後、どのくらいの期間で退院できますか?
回復が順調で特に問題がない場合は、手術後8〜10日前後で退院可能となります。しかしながら手術の部位や手術後の回復状態の早さで異なり、個人差があります。
Q8
退院後の食事で気をつけることはありますか?
基本的には何を食べてもかまいませんが退院後しばらくの間は、便通を安定さるために気をつけた方が良いことがあります。
食物繊維が多いものや消化の悪いものは控えめにします。また、腸閉塞や下痢の原因となる場合がありますので食べ過ぎないように注意しましょう。それ以外では
* 規則正しい食生活
* ゆっくりとよく噛む事
* バランスの良い食事を腹八分にとる
という事を心掛けてもらえれば、特に神経質に考える必要はありません。
Q9
大腸を切除して、栄養障害などの弊害はおきませんか?
栄養の吸収はほとんどが小腸で行われます。大腸の主な働きは水分吸収であり、消化や栄養吸収の働きはありません。このため、大腸の切除によって栄養障害が起こる事はありません。
また、成人の大腸は約1.5mの長さがあり、通常の手術では20〜30cmの大腸しか切除しません。そのため人によっては多少便がやわらかくなる事があるかもしれませんが、水分吸収への影響はほとんどありません。
中村 文隆(なかむら ふみたか)先生
昭和37年生まれ、札幌市出身
昭和62年北海道大学医学部卒業、
北海道大学医学部第2外科入局
浦河日赤病院、国立札幌病院、美唄労災病院、帯広厚生病院、北大病院などを勤務後、平成9年4月より手稲渓仁会病院外科に勤務
専門:消化器外科、内視鏡外科、救急外科
日本外科学会専門医、指導医
日本消化器外科学会専門医、指導医
日本救急専門医、医学博士
医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院 外科
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