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医学ひとくち講座
乳がん〜再発防止と患者さまに合わせた治療法〜

 新規発生の乳がん患者は全国で年間約4万人を数え、今後も増えると予測されています。
 乳がんの症状と最新の治療事情について、手稲渓仁会病院の成田吉明先生に聞きました。

Q1
乳がんになると、どのような症状が現れるのでしょうか?
  乳がんになると乳房に病巣のしこりができます。当病院に訪れる乳がんの患者さんは、自分でしこりに気づいて来院される方が8割以上です。この場合、しこりの大きさは2pほど。

 これに対して医師による触診やマンモグラフィ検査などの検診で発見される場合は1pほどで、早期治療にかかることができます。

乳がんの特徴は、痛みを感じるケースが少ないことです。痛みや違和感をおぼえて発症に気づく方は数%しかいません。

また、乳頭からの分泌物にも注意してください。出産後、授乳期から1年間ほど母乳が出ますが、血がまじった赤い分泌物が見られるときは、がんによる異常分泌の可能性があります。

Q2
乳がんにかかりやすいとされる条件は何でしょうか?
  日本人が乳がん罹患率の急増は生活様式の欧米化が最大の要因といわれていますが、忘れてならないのは、遺伝の要素です。乳がんを発症させる遺伝子がすでに2つ発見されています。遺伝的につながりのある親族のなかに乳がんの方がいれば、乳がんにかかる可能性は他の方より高いといえます。

また、女性ホルモンの分泌期間の長さが乳がんに関係することもわかっています。乳がんの細胞にとって、女性ホルモンは栄養ドリンクのようなものです。初潮が早く閉経が遅い、出産の経験がないといった女性は、女性ホルモンの血中濃度が高い状態に長くさらされるので注意が必要です。

Q3
どのような治療が行われていますか?
  まず、病巣を切り取る手術があげられます。以前は乳房を大きく切り取る手術が主流でしたが、現在は乳房をなるべく美しい形で残す温存治療が多く行われています。ここ20年ほどの研究によって、双方の生存率に差がないことがわかりました。乳房と病巣の大きさにもよりますが、当病院では現在約5割の方が温存治療を受けています。

 放射線治療は、患部や転移のおそれのあるリンパ節に放射線をあて、がん細胞を焼く治療です。おもに再発防止を目的に手術後に所属リンパ節に対して行ってきましたが、副作用が少ないため、当病院では積極的に施行しています。

 抗がん剤による化学療法も、従来にくらべ年々多くの方に行うようになってきました。抗がん剤には、吐き気や髪の毛が抜ける、白血球が減るなどの副作用があります。しかし、副作用を抑える手段もあり、その軽減にはあらゆる手をつくしています。

 患者が年々増え続けていること、治療法が患者さまによって異なることから、乳がんは他のがんに比べて治療法の発達や新薬の開発がめざましく、治療も多様化しています。

Q4
新しい治療法にはどんなものがありますか?
センチネルリンパ節(見張りリンパ節)
センチネルリンパ節(見張りリンパ節)
  現在もっとも注目されているのは、センチネルリンパ節生検です。乳がんが転移しやすいのは、わきの下にあるリンパ節(図)です。この場所は転移の有無の確認がむずかしいため、従来は多くの場合、転移の有無にかかわらずリンパ節を切除してきました。

しかしこの場合、腕がむくむリンパ浮腫という後遺症を引き起こす原因になります。センチネルリンパ節生検では、切除せずに転移を確認できるため、手術前の診断で転移がないと判断された方の約9割でリンパ節を切らずにすむようになりました。

 しかし、もっとも防がなければならないのは、がん細胞を体内に残すことです。もし、リンパ節への転移が見られる場合にはきちんと切除し、予防、再発防止に全力を注いでいます。

Q5
手術後の再発防止治療について教えてください

  毎年1万人が乳がんで命を落とし、手術後も3割の方が再発しています。一般に手術後5年は通院が必要とされています。薬の内服は5年、定期検診には10年間通うことをおすすめしています。

再発防止のための治療は外来で行います。当病院では現在、外来用の化学療法センターの開設を計画しております。リクライニングシートやテレビを導入し、少しでもストレスの少ない環境で抗がん剤治療を受けられるよう設備を整える予定です。

 乳がん患者の数は、40代の女性をピークに上下の年齢層にすそ野が広がっています。乳がんの定期的な検診を心がけてください。

Q6
治療ではどういったことに重点が置かれていますか?
  乳がんにおける外科手術の意義は、病巣を取り除くこと、病理学的にがんの情報を得ることの2つがあります。

 がんの大きさ、性質、周囲への浸潤などを調べると、治療法の有効性、再発しやすさなど、手術後の治療方針に役立てることができます。がんの性格を知ることで、患者さまに合わせたオーダーメイドの治療につなげています

成田 吉明(なりた よしあき)先生

1985年 北海道大学卒業
1989年 北海道大学 大学院修了、帯広厚生病院、伊達赤十字病院、北海道大学病院第二外科助手を経て、
1997年 手稲渓仁会病院外科

日本外科学会指導医・専門医、日本呼吸器外科学会指導医・評議員、日本乳癌学会認定医、呼吸器外科専門医
医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院 外科部長、胸部一般外科部長
成田 吉明(なりた よしあき)先生

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