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医学ひとくち講座
胃がん〜胃がんの現状と進む早期治療〜

 胃がんは壮年以降の男性にとって代表的ながんの1つで、患者数は全国で年間10万人に上ります。進む早期発見と治療のための取り組み、予防について、手稲渓仁会病院の中村文隆先生に聞きました。

Q1
胃がんはどういう病気ですか?
図1 胃壁の構造
図1 胃壁の構造
  
 当院では、胃がんの患者さまの数は、消化器系がんの中で大腸がんに続き、第2位を占めています。慢性的な炎症など、胃への刺激が続くと、その箇所ががん化するおそれがあります。特に、ストレスやお酒などで胃への負担が大きい40代以上の男性が胃がんにかかりやすくなっています。

 胃壁は、図1のように5層構造になっており、主に最上部の粘膜が変質してがん化が始まります。第1、2層までの広がりでは早期がん、3層以上に広がっていると進行がんとされます。自覚症状としては、胸やけ、胃の不快感、痛みなどがありますが、早期がんの段階では自覚症状が現れにくいのが特徴です。

 特殊な胃がんとして、スキルス性胃がんがあります。粘膜ではなく胃壁の内部をはう様に広がるため、検診での発見がむずかしく、胃袋全体にがんが広がった後に病原が表面化します。まれに20〜30代の女性がかかる胃がんは、スキルス性胃がんの特殊なタイプである事が多いです。

Q2
どうしたら予防できますか?
  まずは、胃への刺激を減らすことです。刺激要因としては、塩辛いものや極端に辛い食べ物、免疫機能を落とす喫煙、ピロリ菌などが考えられます。刺激の強い食事を控えたり、禁煙することで、胃がんをある程度予防することができます。

 1つのがん細胞から早期がんの状態になるには数年、進行がんになるまではさらに2〜3年を要します。この間は5年以上もあります。バリウムを飲む検査では、早期がんの発見はむずかしいです。40歳を超えたら2〜3年、できれば1年に1度、健康診断で胃カメラによる検診を受けることが早い段階でのがん発見にもつながります。今では、定期的な検診の奨励が進み、胃がんの半数は早期がんとして見つかっています。

Q3
治療はどのように行なわれますか?
図2 がんの進行度
図2 がんの進行度
  
 胃がんの基本的な治療法はがん部分の切除で、進行度によって切除方法を決めます。

 胃の粘膜にとどまっている早期がんの場合、内科での胃カメラを使用した内視鏡的手術で切除する事ができます。リンパ節に転移していないものなら、より大きな病変にも適用できるようになって来ました。入院期間は2泊3日と非常に短くすみます。

 粘膜からさらに広がっている場合には、外科手術による切除が行なわれます。リンパ節への転移の可能性がある場合には、その切除も行なわなければなりません。標準的な開腹手術には2種類あり、食道側から3分の1、までの範囲にがんがあった場合には全摘出、十二指腸側から3分の2にある場合はその3分の2だけを摘出するというものです。

Q4
新しい胃がんの治療法とは
  外科手術で最近よく行なわれるようになってきたのが、腹腔鏡手術。内視鏡的手術で切除できるがんよりも、もう少し大きな早期がんが主な対象となります。お腹に小さな切り口を4箇所ほど開け、小型カメラを挿し込んでモニターを見ながら行なうものです。開腹手術にくらべ手術時間は長いのですが、手術跡が小さく、術後の回復も早いです。がん細胞の取り残しの心配もありましたが、技術の進歩によって確実性が高まってきています。

 当院では、今年から一部の進行がんにも適用し、すでに70例が行なわれました。この手術だと、手術の翌日には歩行と水を飲むことが可能で、入院期間は10日ほど。1週間すれば普通のご飯も食べられます。

Q5
手術後の生活は変わりますか
  胃の摘出後特有の症状として、ダンピング症状といわれている低血糖があります。

 本来、胃で細かくなった食べ物は、幽門という弁を通り少量づつ腸へと送られ、食事から2〜3時間後に血糖値が最高になります。それに合わせて、小腸に食べ物が流れ始めると体は血糖を下げます。しかし、幽門部を含む胃の摘出を行なった場合、食事ごとの摂取量が減る上に、食べ物がどんどん腸に送られることになるため、体が低血糖を起こしやすくなります。

 摘出後の食事の心がけとして、時間をかけてよく咀嚼すること、一回あたりの量を少なめに抑えること、そして、栄養価の高いものを食べる事をおすすめします。あめを持ち歩くのも有効な対策です。また、お腹が減るのが早くなるので、食事の回数を増やしたり、間食をはさむことで、それまで食べていた量を6回ほどに分けてとる様にしましょう。

 胃がなくなったからと言って、食べられるものは変わりません。あれもだめ、これもだめでは、ストレスにもなります。食べ方と量に気をつければ、お酒もお肉も大丈夫です。

中村 文隆(なかむら ふみたか)先生

昭和62年 北海道大学医学部卒業
平成 5年 同大学院修了
北海道大学病院第二外科、国立病院機構北海道がんセンター、美唄労災病院、帯広厚生病院

外科専門医、日本消化器外科専門医、消化器病専門医、救急専門医、日本外科学会指導医、日本消化器外科学会指導医、日本内視鏡外科技術認定医、医学博士
手稲渓仁会病院消化器外科部長
中村 文隆(なかむら ふみたか)先生

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