子宮がん
子宮がんは、乳がんと並ぶ女性のがんとして年間およそ8,000人がかかり、近年では若い世代での発症率が高まっています。子宮がんの治療の現状、進む予防やケアの取り組みについて、手稲渓仁会病院の藤野敬史先生に聞きました。
Q1
子宮がんとはどのような疾患ですか
子宮がんの種類
子宮がんには、子宮の入り口付近で起こる子宮頚がんと、子宮の奥の体部で起こる子宮体がんの2種類があります。原因、症状、かかりやすい条件が異なりますが共通する症状は、不正出血です。
Q2
子宮がんにかかる原因は何でしょうか
子宮頚がんの原因としては、『ヒトパピローマウイルス』に感染することにより、子宮頚部の細胞に異常が起こり、がん化することが明らかになっています。
詳しいメカニズムはわかっていませんが、性交渉によってウイルスに感染します。子宮頚がんにかかる年齢層は40〜50代の女性が中心ですが、一般に性交渉の頻度が高まり、近年では20〜30代の若い世代、さらに10代での発症が増えています。
一方、子宮体がんには、女性ホルモンや体質が関わっています。肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病を併発した状態、いわゆるメタボリック症候群の方や、とくに、無月経や生理不順の方は注意が必要です。
子宮体がんの患者さまの多くは50〜60代ですが、ホルモン異常を背景として若い世代でかかる場合もあります。
Q3
子宮がんの治療はどのように行なわれますか
初期の段階では、子宮頚がん、子宮体がんともに手術療法を用い、進行がんになると状態により異なる治療法を適用します。以前はすべて開腹して手術を行っていましたが、近年では体に負担の少ない腹腔鏡を使用する手術が増えてきています。
若年層が子宮頚がんにかかるケースが増えていることもあり、将来的に妊娠することができるように、子宮を温存することが課題になります。初期のがんでは温存できる可能性が高く、レーザーでの治療や、病巣をきちんと取り除くことのできる円錐切除術や頚部切断術を行います。
もちろん、がんの進行度やサイズにより、病巣の取り残し、リンパ節への転移が心配な場合には、子宮を摘出しなければなりません。
子宮体がんの場合、子宮体部を摘出すると、どうしても子宮をなくしてしまうことになります。患者さまの身体や病巣の状態によっては、ホルモン療法などで子宮を摘出しない治療を行うこともあります。抗がん剤による化学療法は、手術前に病巣を縮小するために行ったり、術後のケアとして行うなど、手術に対する補助的な治療として位置付けられています。
また、化学療法の新しい用い方として、放射線療法との併用が挙げられます。一方だけを用いるより効果があり、この7〜8年ほどの間で、治療効果への注目が高まっています。
Q4
予防と早期発見対策は
予防に関しては、子宮頚がんでは、ウイルスの感染を防ぐため、性交渉の際はコンドームを使用すること、子宮体がんでは生活習慣病の改善などが挙げられます。子宮頚がんの早期発見対策は、何といっても、子宮がん検診を受けること。あらゆるがん検診のなかで、もっとも検診の有効性が高いのが子宮がんです。
たとえ無症状だとしても、検診を受けることが早期発見につながります。子宮体がんの場合は、閉経後に不正出血のあった女性が、検査を受けて発見する例も多いです。
子宮頚がんの原因がウイルスだとわかり、ワクチンが開発されました。アメリカでは臨床試験を終え、医療の現場で使用されるようになってきました。性交渉をもつ前に予防接種をしなければならないので、性交渉を経験する年代に達する前に何度か繰り返し接種することが必要です。日本でも臨床試験が進められていて、将来的には日本でもワクチンの使用が始まると思われます。
Q5
手術後のケアについて教えてください
がんが進行し、子宮の摘出とともにリンパ節や神経も切除した場合、患者さまにとって手術後の後遺症が大きな問題となります。
子宮のまわりの神経を切除することで起こるのが、排尿、排便に関わる神経障がいで、現在、できるだけ神経を温存するために技術開発を進めています。そして、リンパ節を切除すると、どうしてもリンパ浮腫を引き起こす心配が出てきます。リンパ浮腫になると足が大きくむくみ、外見が変わるばかりでなく日常生活に支障をきたします。
当病院では、日本ではほとんど取り組まれていないリンパ浮腫の治療に力を入れ、専門教育を学んだ医師、看護師、理学療法士などが、チームでケアに取り組んでいます。海外で広まりつつある複合的理学療法という治療法で、弾性スリープ、ストッキングを使用しむくみを抑えたり、リンパマッサージ、運動療法などを行います。それらはすべて個人に合うように行なうことがポイントです。
正しい知識を持って行わないと、マッサージによってむくみが悪化することもあります。子宮がんの患者さまにとってリンパ浮腫の問題は避けられないので、適切なケアを行うことが大切です。
藤野 敬史(ふじの たかふみ)先生
北海道大学、市立札幌病院、旭川厚生病院、
1992年 米国国立衛生科学研究所客員研究員
1994年 北海道大学医学部付属病院婦人科病棟医長
1996年 北海道大学医学部産婦人科講師
日本産科婦人科学会認定医
母体保護法指定医
日本婦人科腫瘍学会専門医
日本がん治療認定医機構暫定教育医
マンモグラフィ精度管理中央委員会読影認定医
医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院 産婦人科部長
手稲渓仁会病院
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