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前立腺がん

 世界のがん統計では常に上位にあり、日本でも患者数を増やし続ける前立腺がんは、前立腺肥大症とともに男性を悩ませています。手稲渓仁会病院の熊谷章副院長に、前立腺がんとその最新治療についてお話を聞きました。

Q1
前立腺のはたらきについて教えてください
前立腺の構造
前立腺の構造
  前立腺は、男性の生殖機能に大きく関わるクルミのような形状の臓器で、膀胱と尿道のつなぎ目付近を取り巻いています。

 前立腺のはたらきには、男性ホルモンが作用し、また前立腺自体がホルモンを合成していると考えられています。

Q2
前立腺がんはどのような病気ですか
  尿が出にくい、尿が近くなる、残尿感や不快感を覚えるなどの症状があります。前立腺肥大症と症状が似ており、症状だけでは区別がつきにくいです。

 前立腺がんは60代の男性に多く、進行速度がとても遅いがんです。乳がんが女性ホルモンに関係しているように、前立腺がんには男性ホルモンが関係しています。

 世界のがん統計によると、がんのなかで3番目に多くの方がかかるがんです。日本の統計では8番目ですが、少しずつ増え続けていて、2020年までには2番目になるという予想もされています。

 高齢者を中心としたがんなので、社会の高齢化が進み長生きする人が増えていること、また、検査によるがんの発見率が高まったためとも考えられています。

Q3
なにが前立腺がんを引き起こすのでしょう
  要因のひとつとして、遺伝的要素との関連が明らかになっています。家族内、近親者に50代、あるいはもっと若くして前立腺がんを患った人がいると、若年で前立腺がんにかかる確率がとても高いです。

 大腸がんなどほかのがんの要因としても上げられているのが、脂質の多い欧米的な食事が増えたこと。以前から、日本食に多い穀類や豆類が含むイソフラボンが予防に有効だという話もありました。

Q4
予防として心がけることは
  前立腺がんの代表的な検査法が3つあります。肛門から指を入れ前立腺を触診する直腸指診、肛門から機器を差し入れ超音波で前立腺の状態を確認する経直腸エコー。そして、前立腺になんらかの異常があった時のみ血液中に見られる、前立腺特異抗原(PSA)という物質の血中濃度を調べるPSA検査です。

 採血による簡単な検査で確実性も高いPSA検査が主になり、早期発見が増えてきました。前立腺がん検診は定期検診の項目に含まれないので、一般検診の際はご自身で申し込み、早期発見に努めてください。

Q5
どんな治療がありますか
  進行の遅いがんなので、早期の状態で発見されれば経過観察を行う場合もあります。がんの大きさによって、外科手術、放射線治療、ホルモン治療の3つ治療方針から、1つ、もしくは組み合わせた治療が行われます。

 膀胱などの他臓器にまでがんが広がり始めている場合は、骨やリンパ節への転移している確立が高いため、外科手術ではなく、ホルモン治療を行います。

 抗がん剤治療はまだ確立されていません。長期的にホルモン治療を続けると、ホルモン治療が効かなくなってくるため、早急な抗がん剤化学療法の確立が求められています。

 また、すべてのがんに有効な治療法として、がんの増殖因子を断つという分子標的治療の研究にも期待が集まっています。

Q6
治療後の後遺症、そのケアは
  術後の生活に最も影響を与えるのは、尿失禁と男性機能の変化です。尿失禁は前立腺を摘出したために起こり、入院中に治る方もいれば、一年続く方もいます。

 日常生活で気にならない程度まで回復するには、平均で3〜4ヵ月かかります。全摘出だと勃起神経も失うことになるので、患者さまの年齢や希望にもよりますが、男性機能を温存できるかどうかという問題は大きいです。

 治療の経過は、治癒されて年3回のPSA検査で再発をチェックする患者さまと、がんが再発、再燃、あるいは進行し緩和ケアを同時に受ける患者さまとで、大きく2つに分かれます。いずれの場合も、最後まで細心のケアを必要とします。

Q7
手稲渓仁会病院での最新治療について
  近く、強度変調放射線治療(IMRT)という最新機器を用いた治療を開始する予定です。

 非常にすぐれた放射線治療で、前立腺のみに集中的な放射を加えることが可能で、現在の放射線治療で問題となる前立腺周辺臓器への負担を防ぐことができます。

 外科手術に代わる根治治療として高い治療効果が見込まれ、ホルモン治療との組み合わせなど、治療の幅が大きく広がります。地域の医療関係者にととまらず、道内でも望まれている治療法で、放射線技師、放射線物理士と治療医とで治療システムの構築を急いでいます。

熊谷 章(くまがい あきら)先生

東京厚生年金病院、北海道大学病院
伊達赤十字病院、札幌鉄道病院。函館協会病院
日本泌尿器学会指導医
医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院 副院長 泌尿器科
熊谷 章(くまがい あきら)先生

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