喉頭がん
喉頭がんは、全国で年間およそ3,000名が罹り、耳鼻咽喉科で扱うなかで最も件数の多いがんです。喉頭という器官、喉頭がんの治療やケアなどについて、手稲渓仁会病院の耳鼻咽喉科部長 古田康医師にお話を聞きました。
Q1
喉頭とはどの部分を指すのでしょうか?
喉頭の構造
喉頭とは「のど仏」と言われる部分です(図参照)。口の奥は首のあたりで、食べ物が進む食道と、肺へとつながる気道に枝分かれしています。喉頭は気道の入り口で、飲食の際に気道をふさぐ喉頭蓋(こうとうがい)と、発声のための声帯があります。
Q2
喉頭がんの症状は?
喉頭がんにかかるのは一般的に50〜70代、男女比は10対1で、ほぼ男性のがんです。症状として、声のかすれ、のどのイガイガ感や痛みなどがあらわれ、進行すると、がんの転移による頚部リンパ節の腫れ、嚥下障害(※)、呼吸困難などが起こります。
部位別に、喉頭蓋にできる声門上がん、声帯にできる声門がん、声帯より下にできる声門下がんに分かれ、全体の7割を声門がんが占めます。声帯にがんができると声がかすれるので、声門がんの多くは早期に発見されます。
(※)疾病や老化などの原因により飲食物のそしゃくや飲み込みが困難になる障がい
Q3
有効な予防法はありますか?
喉頭がん患者の90%以上は喫煙者で、喫煙さえ控えれば予防できるがんといえます。喉頭がんや肺がんなど喫煙に関係するがんは、「喫煙指数(ブリンクマン指数)」という目安で、喫煙量からがんの罹りやすさを測ることができます。「1日の平均喫煙本数」と「喫煙年数」をかけた値が、400以上だと肺がんが発生しやすい状態、1,200以上で喉頭がんの危険性が極めて高い状態とされます。喫煙開始年齢が若いほどかかりやすいので、できるだけ早い段階での禁煙をおすすめします。
また、喉頭がんの検査は、数ミリの太さのカメラを鼻から挿入するだけの、簡単で体への負担が少ない検査です。耳鼻咽喉科であればどこの医療機関でも受けられるので、症状に心当たりのある方は一度受診してみてください。
Q4
どのような治療がおこなわれますか?
喉頭がんでは、がんの発生部位や進行度などにより、放射線治療や手術治療が用いられます。治療期間は、放射線治療で7週間ほど、手術だとリハビリを含め1ヶ月ほどを要します。
早期で見つかると、放射線治療や声帯などの部分切除により、発声や飲み込みなどの機能を温存する治療が行われます。進行すると喉頭の全摘出が行われることが多く、飲食物が気道に進入するのを防ぐため、空気と食べ物の通り道を完全に分けます。口で飲食し、首の付け根に設ける1.5〜2.0pほどの穴で呼吸することになります。
近年では、進行がんや再発がんの場合でも、喉頭の機能を温存するための治療法の開発が進んでいます。患者様の年齢や体力、症状などによって適不適がありますが、放射線治療と抗がん剤治療を同時に行う方法や、機能を残しながら切除範囲を広くとる手術方法があります。
Q5
治療後の後遺症は?
喉頭を全摘出した場合に最も大きな問題となるのは、本来の声を失うことです。飲食物は食べやすいように工夫すれば、何でも口にすることができますが、空気の通り道が分かれるために、においや風味を感じる力がとても弱くなったり、麺類などをすすることができなくなったりします。
また、力の必要な動作や排便などの際、息を止めて力むことができなくなります。首の付け根に気管口があるので、入浴時は水が入らないように注意が必要です。
温存治療の場合でも、声のかすれや飲み込みの障がいが少なからず生じます。放射線をあてることで粘膜から湿り気が失われるので、のどを乾燥させないことも大切です。
Q6
喉頭がなくても発声することはできますか?
飲み込んだ空気で食道を振るわせながら発声する食道発声法や、スティック状の電気喉頭という機器をのどにあてて発声する方法があります。治療を受けた病院で習得するためのリハビリを受けられるほか、北海道で活動する「北鈴会」という喉頭がんの患者団体が発声教室を実施しています。
また、埋め込み式の人工喉頭も普及してきています。食道と気道の間に取り付けられた弁を通して食道に空気を送り込み、食道を振るわせながら発声する方法です。この方法は、術後早期から発声する事が可能です。
古田 康(ふるた やすし)先生
昭和59年 北海道大学医学部医学科卒業
北辰病院(現:札幌社会保険総合病院)、釧路市立病院、スウェーデン・イエテボリ大学、北海道大学病院など勤務を経て、平成19年7月より手稲渓仁会病院勤務
日本耳鼻咽喉科学会認定専門医・評議員
日本気管食道学会認定気管食道科専門医・評議員
北海道大学客員臨床教授、医学博士
所属:
医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院 耳鼻咽喉科部長
医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院
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