全面施行でも課題を残す「身体障害者補助犬法」の不備
盲導犬は、身体障害者補助犬に“格上げ”されたが…
偏った罰則規定の実態
文: 越山
写真: 北海道盲導犬協会提供
昨年5月29日に公布された「身体障害者補助犬法」が、今年10月1日から全面施行された。
全面施行によって、昨年10月から受け入れが義務付けられていた公共的施設、公共交通機関に加え、不特定多数が利用する飲食店、ホテル、デパートなどの民間施設においても身体障害者補助犬の同伴が認められることになった。
この法律は、身体障害者補助犬の訓練事業者及び使用者の義務を定めるとともに、これまで道路交通法上の規定しかなかった盲導犬、さらには法的な位置づけがないことからペットと同様に扱われてきた介助犬や聴導犬を「身体障害者補助犬」と定め、その存在と役割を法的に規定し、身体障害者補助犬を使用する障害を持つ人の自立と社会参加の促進を図ることを目的としている。
現在、日本では盲導犬927頭、介助犬38頭、聴導犬15頭が身体障害者補助犬として活躍している(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課社会参加推進室調べ)が、この法律の1部施行から1年が経過した現在においても、法律の名称や内容、身体障害者補助犬の役割が社会に浸透しているとは言い難い。
実際、最も認知されている盲導犬でさえ、いまなお同伴を拒否されるケースは少なくない。
北海道盲導犬協会の和田孝文氏は障害者補助犬法と盲導犬についてこう語る。
「身体障害者補助犬法の施行をきっかけとして、視覚に障害を持つ方だけでなく、持たない方にも盲導犬に関心を持っていただければと思う。それによって、盲導犬は何ができ、視覚に障害を持つ方が何に不便を感じているのか、一歩踏み込んだ形で正しく理解される機会となることが、この法律の第一段階。盲導犬が身近な存在であることを理解してもらえるように私たちも活動を続けていきたい」
とはいえ、この法律にはまだまだ不十分な点があることも事実。
身体障害者補助犬を使用する障害を持つ人にその管理、衛生面の確保、身体障害者補助犬であることの表示を義務付け、なおかつ身体障害者補助犬の訓練事業者に対しては、改善命令や指定の取り消し、罰則を規定している。
ところが、身体障害者補助犬の同伴を拒んだ公共的施設、公共交通機関、不特定多数が利用する民間施設に例外は認めても、罰則規定はないのだ。さらに、「自立と社会参加の促進」とありながら、民間の事業所や住宅においては強制力の一段弱い「拒まないよう努めなければならない」という努力義務にとどめられている。
地域社会で生活していくためには、生活の拠点となる場所の確保は絶対条件である。これは盲導犬、聴導犬、介助犬を伴った障害を持つ人に限ったことではない。多様な生活様式を考えれば、単身で生活していくこと、家族を構成していくことがあって当然だ。
そもそも、この法律を制定しなければ盲導犬、聴導犬、介助犬といった補助犬の存在を認めることができなかった社会にこそ解決すべき問題は内在している。この法律がなぜ盲導犬、聴導犬、介助犬を伴って生活する障害を持つ人にとって待ち望まれたものであったのかを今一度考える必要があるはずだ。
日本における身体障害者補助犬に対する取り組みは、いままさに始まったと言っていいだろう。
この身体障害者補助犬法をはじめ、2000年6月の「社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律」により、01年4月に「盲導犬訓練施設事業」が、02年5月の改正で「介助犬訓練事業」「聴導犬訓練事業」が第2種社会福祉事業として位置付けられたばかりだ。
盲導犬、介助犬、聴導犬といった身体障害者補助犬は、身体に障害を持つ人の生活を支え、人生をより豊かにする大切なパートナーである。同時に社会と、身体に障害を持つ人をつなぎ、人と人とを結びつけるパートナーでもある。その役割を誰もが認め合える社会に成長していくことこそが、身体障害者補助犬法の目指すところ。
■「盲導犬」は、道路交通法第14条第1項に規定する政令で定めるもので、厚生労働大臣が指定した法人から認定を受けたものをいう。
■「介助犬」は、肢体不自由により日常生活に著しい支障がある身体障害者のために、物の拾い上げ及び運搬、着脱衣の補助、体位の変更、起立及び歩行の際の支持、扉の開閉、スイッチの操作、緊急の場合における救助の要請、その他の肢体不自由を補う補助を行う犬。以下同上。
■「聴導犬」は、聴覚障害により日常生活に著しい支障がある身体障害者のために、ブザー音、電話の呼出音、その者を呼ぶ声、危険を意味する音等を聞き分け、その者に必要な情報を伝えること、及び必要に応じ音源への誘導を行う犬。以下同上。
■「道路交通法第十四条」 目が見えない者(目が見えない者に準ずる者を含む)は、道路を通行するときは、政令で定めるつえを携え、または政令で定める盲導犬を連れていなければならない。
■「厚生労働大臣が指定した法人」 身体障害者補助犬の訓練又は研究を目的とする民法上の規定によって設立された法人、または社会福祉事業を行うことを目的として社会福祉法の規定によって設立された社会福祉法人。具体的には、第二種社会福祉事業として位置づけられた「盲導犬訓練事業」「聴導犬訓練事業」「介助犬訓練事業」を経営するものであって、身体障害者補助犬法第十六条に規定される業務を適切かつ確実に行うことができることを、その申請によって認められた法人。
■越山正禎(こしやま まさつぐ)■1972年秋田で生まれ青森で育つ。現在、札幌市在住。大学在学中の緑内障発症により、視覚に障害を持つ。ただいま社会福祉士を目指し勉強中。
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